小説の書き方(7) 視点について

こんにちは、武岡です。

今回は小説を書くにあたって、誰の視点で物語を紡ぐか、という点についてそれぞれの特徴を踏まえながら見て行こうと思います。

よく見るのは「主人公の一人称」と「神の視点」ですね。それぞれ分けて解説いたしますので、貴方の作風にぴったり合う視点を探しましょう。


・主人公の一人称

主人公の視点で物語が展開する形式です。この視点のメリットは「視点を一人に絞ることでその人の深掘りがしやすい」点です。主人公の感情・価値観などを細かく描写しやすいです。また、「主人公と読者の目線を同じにすることで臨場感を出しやすい」点もあります。書き方の工夫次第では読者がまさに主人公になって物語に入り込ませることすら可能と言えるでしょう。

この視点のデメリットは「主人公が知りえる以上の情報が入って来にくい」点です。どういうことかというと、例えば主人公がヒロインと話をしているシーンで、ヒロインが頬を赤らめたとします。しかし主人公がわかるのはそこまで。恥ずかしがっているのか、怒っているのか、はたまた急な発熱かはわからないので、推測で語ってもらうしかありません。「Aが恥ずかしさに頬を赤らめた」とは書けません。「Aの頬が赤くなった。熱でも出たのだろうか?」という書き方になります。このように他者の真意や内情については具体的に言及できません。もしそれを書こうと思うのならば、さらに外的要因で主人公が確信できるシーン・セリフを書く必要があります。(先ほどの例ならば「は、恥ずかしいこと言わないでよね……」とAが発言するなど。)


・神の視点

傍観者の視点です。物語を俯瞰的に見ていく視点ともいえます。メリットは「幅広いキャラクターの描写ができる」点でしょうか。ある場面ではAについて、次の場面ではBのこと、といろいろなキャラクターに焦点を当てて物語を進めることができます。

デメリットももちろんあります。「視点がころころ変わると読者が感情移入しにくくなる」という点です。「Aは~した。同時刻、Bは~」とカメラがあっちこっち向きを変えるので、いったい誰に没入すればいいかあいまいになるんですね。この解決策といたしましては、「誰が主役なのかはっきりさせておく」に尽きます。皆に平等にカメラを当てる時間を割くのではなく、重要な人物に主眼を当てつつ、補完として別の時間・場所で起こっていることを少し描くくらいの配分を意識しましょう。ともすると主役がどっか行っちゃうので……。


・いいとこどりしたい!

この二つのいいとこどりってないの?という疑問。……実はあります。

「一人称視点で複数人の視点を描く」手法です。ゲームで言うならば、章ごとに操作キャラクターが変わる、というやつです。零シリーズでよく見ました。重要人物が複数人いる場合などには効果的です。しかし欠点がないというわけではありません。やはり「感情移入先が複数あって没入しにくい」ですし、「推理小説のように散らばった情報を読者が一つにまとめ上げる手間をかける」というのもあります。これらをどううまく処理するか。作者の腕が試されます。


・まとめ

視点の決め方は人それぞれ、作風それぞれといった感じですが、メリットデメリットを頭の隅に入れておくとまた違ったロジックの組み方ができるのではないでしょうか。

それでは、また。

武岡瑞樹のひとりごと

一次創作の小説書きのつぶやき。

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